監査事例の検討-10(グループ監査)

事例の概要
 メーカーである会社が買収により取得した海外販売子会社の売上高は連結売上高の約10%を占めていたが、当該子会社が外国会社であるため会社との企業文化の違いが大きく、子会社の内部統制は構築途上であった。
 会社は、主として、当該子会社の管理部門と月次決算報告を通じて業績に関するコミュニケーションを行っていたが、子会社の内部統制については子会社経営者に任せていた。
 当該子会社において、過年度(数年)にわたり財務報告に係る内部統制の軽微な不備や会計処理の軽微な誤謬が散見されたが、重要性がないため連結修正は行っていなかった。
 監査人は、当該子会社を重要な構成単位として識別し、構成単位の監査人に監査指示書を送付し、監査計画、実施した手続の内容およびその結果に関する回答を入手し、手続の十分性および結果の妥当性を評価した。
 監査人は、会社の当該子会社に対する管理体制の不十分さを認識していたが、構成単位の監査人から、複数年にわたり財務報告に係る内部統制の不備が数件あったが、軽微な不備であり実証手続の範囲を拡大することで対応可能であること、および複数年にわたり軽微な会計処理の誤謬が散見されたが、集計しても重要な虚偽表示となっていないことから、リスク評価の見直しは不要ではないかとの報告を受けたことから、リスク評価の見直しは不要と判断した。
 構成単位の監査人からの報告の内容について、構成単位の監査人とコミュニケーションをとらなかった。

判明した事項
 会社は、連結決算作業の過程において当該子会社の会計処理に疑義が発覚したため調査した結果、多数の誤謬が発見された。個々の誤謬金額はさほど大きくなかったが誤謬の件数が多数であったため、結果的に過年度財務諸表を訂正した。

監査上の問題点
 内部統制監査がどのように実施されていたのか詳細が不明であるため断定できないが、当該子会社の内部統制の不備を軽微と判断したことから、内部統制上の特段の問題を認識していなかったと思われる。そうであれば、このことが本事例の根本問題であろう。

監査人が実施すべきであったリスク評価、監査手続等
 当該子会社の企業文化が会社と大きく異なっていること、内部統制が構築途上であることを認識していたのであるから、会社が整備・運用している内部統制の統制環境とは大きな隔たりがあり、業務プロセスに係る内部統制(コントロール)も買収以前からものであり、会社とは異なっていったことを認識していたと思われる。
 内部統制が不備であるがゆえに、構成単位の監査人が誤謬の全体像を把握できるほどに発見していたかどうかは不明である。会社が多数の誤謬を発見して、合計して重要な虚偽表示と判断したところから、一部の誤謬を発見していたにとどまっていたと思われる。
 また、監査人は、会社の当該子会社に対する管理体制が不十分であることを認識していたのであるから、その管理体制の改善とともに、それによって子会社の内部統制の不備が補完されていないことに思い至ることが必要であった。
 そうであれば、当該子会社に内部統制不備に起因する重要な虚偽表示の発生可能性を意識して、当該子会社を個別の内部統制の評価範囲として統制環境や業務プロセスに係る内部統制(コントロール)が内部統制の基準に準拠しているかどうかを監査人が独自にまたは構成単位の監査人に指示して評価・検証すべきであった。
 また、監査人は、当該子会社が上記の状況にあったのであるから、監査指示書の回答のレビューのみでなく、構成単位の監査人との直接的なコミュニケーションを行う必要があったと考える。

結論
 本事例は、内部統制の不備がもたらす誤謬・不正に対する鈍感さと、形式的、機械的に内部統制監査を実施したことに起因して、その影響が財務諸表監査にも及んでしまった監査の失敗事例である。
 監査人は内部統制について十分な理解を有していたのかという疑問を払拭できない。

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