監査報酬未払いを理由とした監査人辞任への批判
3月期決算会社の監査人が決算日をとうに過ぎた平成25年5月7日に辞任しました。その辞任理由が解せません。
事案の概要
会社は、監査人に対する平成24 年3 月期の監査報酬の一部および平成25 年3 月期の監査報酬の支払いができていない財務状況にあり、平成25 年3 月期の監査報告書の提出日までに平成24 年3 月期の監査報酬の未払分について支払うことが難しい状況にあります。また、ここ数事業年度にわたり営業損失および営業キャッシュ・フローのマイナスが続き、借入金の返済および経費の支払いの遅延が発生している状況において、資金計画における増資および借入による資金調達の計画は実現に至っておらず、さらに、平成25 年3 月期第1四半期累計期間において四半期損失を計上した結果、債務超過に陥っている状況にあり継続企業の疑義の程度が増大している状況において、監査人から監査および四半期レビュー契約解除の申し入れがあったため、会社は受理せざるを得ないと判断し、監査人は辞任することとなりました。
監査人の辞任理由
会社が公表した監査人からの契約解除申入書の内容によれば、監査人が辞任に至った理由は、(1)監査報酬の未払いの状況で平成25 年3 月期の監査意見を表明することは日本公認会計士協会「独立性に関する指針」に違反するため、監査人は平成25 年3 月期の監査意見を表明することができないと判断したこと、および(2)継続企業の前提に関する不確実性が高まっているため平成25 年3 月期の監査意見が不適正または意見不表明となる可能性があることです。
監査意見不表明の可能性
会社の継続企業の前提に関する不確実性が高まっていて、資金調達ができそうにない状況については会社からの反論もないようです。そうであれば、会社の平成25 年3 月期の監査意見は意見不表明とならざるを得ないであろうと思われます。
また、監査人が契約解除申入書において言及した「不適正意見」の可能性は、必要な開示・注記が行われない状況を想定したものと思われます。
監査人は、平成24 年3 月期では継続企業の前提に関する重大な不確実性によって追記情報付きの無限定適正意見を表明していました(平成24 年3 月期有価証券報告書)。平成25 年3 月期中に会社は債務超過に陥り、会社存続の可能性の厳しさは一層増している状況にあると思われるため、監査人が意見不表明とすることが、会社の存続の可能性を断ち切ることになるかもしれません。監査人としてこのような処刑執行人になりたくないと思うことには同感します。
筆者も同じような立場にたったことがあります。そのような状況から逃げ出したくなったり、我々の監査意見が会社、従業員やその家族の将来にまで大変な影響を及ぼしてしまうかもしれないことに相当悩んだことを記憶しています。
悩んだ末に筆者がたどり着いた結論は、どんな状況であっても、自分が納得して形成した監査意見を表明するしかない、そして、それによって責任を追及されたり、非難されたりしても仕方ないと腹を決めるしかない、ということでした。
そんな経験からも、意見不表明や不適正意見の表明をしたくないというような理由によって監査契約解除を申し入れたのであれば、「逃げるな! 監査人!」と大きな声をあげたい。
監査人の目的は監査意見の表明です。
意見不表明であっても、監査人が監査意見を表明できないと判断した結果であるため、監査意見の表明に該当すると解しています。それゆえに、会社の継続企業の前提に重大な不確実性があるため監査意見を表明できないと判断したのであれば、それをきちんと監査報告書に記述すべきです。
監査報酬の未払い
監査人が契約解除申入書において根拠として示している、日本公認会計士協会「独立性に関する指針」第153 項は「第2部 監査業務以外の保証業務における独立性」における規定であり、正しくは「第1部 監査業務における独立性」第223項です。ただし、実質的に規定内容に差異はありません。
「独立性に関する指針」第223項は、以下のとおりです。
依頼人からの報酬が長期にわたって未払いである場合、特に次年度の監査報告書が提出される段階になっても未払いの割合が大きい場合、独立性を阻害する自己利益を生じさせる。通常、次年度の監査報告書の提出までに支払いが完了していなければならない。監査報告書の提出後も支払われていない場合、阻害要因の有無および重要性を評価し、必要に応じてセーフガードを適用して、阻害要因を除去するか、または重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減しなければならない。セーフガードには、例えば、監査業務チームの構成員でなかった別の会員から助言を受けまたは実施した業務の検証を受けること等が上げられる。会計事務所は、未収報酬が依頼人への貸付と同等とみなすべきか判断しなければならず、また、期限経過をしている部分の金額の重要性を考慮し、業務を継続することが適切であるかについても判断しなければならない。
「独立性に関する指針」第223項を適用するための概念的枠組みアプローチ
概念的枠組みアプローチの下では、独立した立場を保持することを阻害する要因を認識し、認識した阻害要因の重要性を評価して、その重要性が許容できない水準の場合にはセーフガードの適用によって阻害要因を除去するかまたは重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減します。そして、適切なセーフガードが存在しないかまたは適用できない場合は、当該阻害要因を生じさせる状況もしくは関係を除去するか、または監査業務の契約の締結を辞退もしくは契約を解除するかを判断しなければなりません。(「独立性に関する指針」第7項参照)。
阻害要因
概念的枠組みアプローチを適用するために認識する「独立した立場を保持することを阻害する要因」は、「独立性に関する指針」第223項の「独立性を阻害する自己利益」です。
自己利益は、金銭的その他の利害を有していることにより、会員の判断又は行動に不当な影響を与える可能性があること(倫理規則注解6‐3一)です。
監査報酬の長期未払いによって監査人が監査対象会社に対する債権(貸付金)という金銭的利害関係を有することによって、監査人が当該債権回収のために監査意見を不当に歪める可能性を生じさせる原因になるということです。
事案の場合、例えば、監査人が継続企業の前提に関する重大な不確実性に目をつぶり、適正意見を表明することで会社を延命させて未払報酬の回収を目論むように監査人が自己の利益を追求することです。
長期にわたって未払いである場合
独立性に対する阻害要因は、監査報酬が「長期にわたって未払いである場合、特に次年度の監査報告書が提出される段階になっても未払いの割合が大きい場合」に生じるとされています。
監査報酬が「長期にわたって未払いである場合」とは、当年度の監査報酬は、「通常、次年度の監査報告書の提出までに支払いが完了していなければならない」とされています。
事案の場合には、未払いとなっている平成24 年3 月期の監査報酬の一部が平成25 年3 月期の監査報告書の提出までに完了していないので、この規定に該当します。
しかし、「通常」とされていることから、監査報酬の支払いが長期にわたって完了していないことだけをもって、重要な阻害要因が生じているとは判断できません。
監査報酬の未払いの割合が大きい場合
長期の監査報酬の未払いが重要な阻害要因となるのは、「次年度の監査報告書が提出される段階になっても未払いの割合が大きい場合」です。
事案の場合、未払いとなっている平成24 年3 月期の監査報酬(17,640千円-平成24 年3 月期有価証券報告書)の一部が重要な割合となっているのかどうかは不明です。また、どれほどの割合になれば重要な阻害要因となるかは監査人の職業専門家としての判断です。
そして、事案の場合、平成24 年3 月期の監査報酬の一部のみでなく、平成25 年3 月期の監査報酬も未払いとなっているとのことですから、小規模監査法人である監査人にとって未払いとなっている監査報酬の総額はそれなりの重要な金額になっているものと推測されます。
それでも、監査業務の特定依頼人に対する報酬依存度の制約から、また、契約解除を申し入れたことから想像すると、監査法人の存続を懸念しなければならないほどの重要性はないだろうと推測します。つまり、未払いとなっている報酬が回収できなくとも、何とかなるのだろうと推測します。
概念的枠組みアプローチの検討のタイミング
概念的枠組みアプローチを適用すべきかどうかの検討のタイミングは、「監査報告書の提出後も支払われていない場合、阻害要因の有無および重要性を評価し、必要に応じてセーフガードを適用して、阻害要因を除去するか、または重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減しなければならない」とされています。
事案の場合、平成24 年3 月期の監査報告書を提出した後に約定したとおりに報酬が支払われなかった(未払いとなった)ときに、そのことを阻害要因と識別し、その重要性を評価することが必要であったはずです。さらに、平成25 年3 月期の監査報酬も未払いとなっている状況からも、平成25 年3 月期を経過した時点に至ってはじめて阻害要因の評価・検討をすべきではなかったと思われます。
あるいは、平成25 年3 月期中ではセーフガードによって、阻害要因が除去されていたか、または許容水準まで軽減されていたが、期末に至って許容水準を超えてしまったのでしょうか。そのようには思えません。
阻害要因のセーフガード
「セーフガードには、例えば、監査業務チームの構成員でなかった別の会員から助言を受けまたは実施した業務の検証を受けること等が上げられる」とされているように、事前審査や事後審査・検査をきちんと受けることによって、監査人(業務執行社員)が自己利益擁護に走らずに真っ当に監査を実施すれば、阻害要因は除去または許容水準にまで容易に軽減できるはずです。
したがって事案では、監査人が監査報酬の未払いに拘泥せずに(つまり、報酬の受領を断念して)、監査人のなすべきことを全うしさえすれば良いはずです。
このようにみてくると、事案の監査人は、監査報酬の未払いを理由として、監査意見の表明を回避したとしか思われません。
結論
事案を検討した結論として、本ブログの2012年11月13日「監査報酬未払いを理由に監査人は辞任できるか?」において述べたことを再度述べておきます。
監査人は霞を食べている仙人ではありませんから大変なことは想像できますが、このような場合は公認会計士が士業のため「武士は食わねど高楊枝」と大見得をきりたいところです。
一端監査契約を締結したならば、監査業務を最後まで遂行し監査意見を表明しなければならないと考えます。監査報酬の未払いが続いていることが、監査人の業務遂行の妨げとなるものではないことから、監査契約の解除の理由にはならないと考えます。
監査人は、例外中の例外を除き、事業年度中における監査契約を解除できないと解すべきです。
事案のような状況の場合であっても監査人は監査を最後まで実施して、最終的な状況に応じて意見を限定するかあるいは不表明とすべきです。監査契約を解除して辞任することで監査人は自己の職務・責任から逃げてはならないと考えます。
事案の概要
会社は、監査人に対する平成24 年3 月期の監査報酬の一部および平成25 年3 月期の監査報酬の支払いができていない財務状況にあり、平成25 年3 月期の監査報告書の提出日までに平成24 年3 月期の監査報酬の未払分について支払うことが難しい状況にあります。また、ここ数事業年度にわたり営業損失および営業キャッシュ・フローのマイナスが続き、借入金の返済および経費の支払いの遅延が発生している状況において、資金計画における増資および借入による資金調達の計画は実現に至っておらず、さらに、平成25 年3 月期第1四半期累計期間において四半期損失を計上した結果、債務超過に陥っている状況にあり継続企業の疑義の程度が増大している状況において、監査人から監査および四半期レビュー契約解除の申し入れがあったため、会社は受理せざるを得ないと判断し、監査人は辞任することとなりました。
監査人の辞任理由
会社が公表した監査人からの契約解除申入書の内容によれば、監査人が辞任に至った理由は、(1)監査報酬の未払いの状況で平成25 年3 月期の監査意見を表明することは日本公認会計士協会「独立性に関する指針」に違反するため、監査人は平成25 年3 月期の監査意見を表明することができないと判断したこと、および(2)継続企業の前提に関する不確実性が高まっているため平成25 年3 月期の監査意見が不適正または意見不表明となる可能性があることです。
監査意見不表明の可能性
会社の継続企業の前提に関する不確実性が高まっていて、資金調達ができそうにない状況については会社からの反論もないようです。そうであれば、会社の平成25 年3 月期の監査意見は意見不表明とならざるを得ないであろうと思われます。
また、監査人が契約解除申入書において言及した「不適正意見」の可能性は、必要な開示・注記が行われない状況を想定したものと思われます。
監査人は、平成24 年3 月期では継続企業の前提に関する重大な不確実性によって追記情報付きの無限定適正意見を表明していました(平成24 年3 月期有価証券報告書)。平成25 年3 月期中に会社は債務超過に陥り、会社存続の可能性の厳しさは一層増している状況にあると思われるため、監査人が意見不表明とすることが、会社の存続の可能性を断ち切ることになるかもしれません。監査人としてこのような処刑執行人になりたくないと思うことには同感します。
筆者も同じような立場にたったことがあります。そのような状況から逃げ出したくなったり、我々の監査意見が会社、従業員やその家族の将来にまで大変な影響を及ぼしてしまうかもしれないことに相当悩んだことを記憶しています。
悩んだ末に筆者がたどり着いた結論は、どんな状況であっても、自分が納得して形成した監査意見を表明するしかない、そして、それによって責任を追及されたり、非難されたりしても仕方ないと腹を決めるしかない、ということでした。
そんな経験からも、意見不表明や不適正意見の表明をしたくないというような理由によって監査契約解除を申し入れたのであれば、「逃げるな! 監査人!」と大きな声をあげたい。
監査人の目的は監査意見の表明です。
意見不表明であっても、監査人が監査意見を表明できないと判断した結果であるため、監査意見の表明に該当すると解しています。それゆえに、会社の継続企業の前提に重大な不確実性があるため監査意見を表明できないと判断したのであれば、それをきちんと監査報告書に記述すべきです。
監査報酬の未払い
監査人が契約解除申入書において根拠として示している、日本公認会計士協会「独立性に関する指針」第153 項は「第2部 監査業務以外の保証業務における独立性」における規定であり、正しくは「第1部 監査業務における独立性」第223項です。ただし、実質的に規定内容に差異はありません。
「独立性に関する指針」第223項は、以下のとおりです。
依頼人からの報酬が長期にわたって未払いである場合、特に次年度の監査報告書が提出される段階になっても未払いの割合が大きい場合、独立性を阻害する自己利益を生じさせる。通常、次年度の監査報告書の提出までに支払いが完了していなければならない。監査報告書の提出後も支払われていない場合、阻害要因の有無および重要性を評価し、必要に応じてセーフガードを適用して、阻害要因を除去するか、または重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減しなければならない。セーフガードには、例えば、監査業務チームの構成員でなかった別の会員から助言を受けまたは実施した業務の検証を受けること等が上げられる。会計事務所は、未収報酬が依頼人への貸付と同等とみなすべきか判断しなければならず、また、期限経過をしている部分の金額の重要性を考慮し、業務を継続することが適切であるかについても判断しなければならない。
「独立性に関する指針」第223項を適用するための概念的枠組みアプローチ
概念的枠組みアプローチの下では、独立した立場を保持することを阻害する要因を認識し、認識した阻害要因の重要性を評価して、その重要性が許容できない水準の場合にはセーフガードの適用によって阻害要因を除去するかまたは重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減します。そして、適切なセーフガードが存在しないかまたは適用できない場合は、当該阻害要因を生じさせる状況もしくは関係を除去するか、または監査業務の契約の締結を辞退もしくは契約を解除するかを判断しなければなりません。(「独立性に関する指針」第7項参照)。
阻害要因
概念的枠組みアプローチを適用するために認識する「独立した立場を保持することを阻害する要因」は、「独立性に関する指針」第223項の「独立性を阻害する自己利益」です。
自己利益は、金銭的その他の利害を有していることにより、会員の判断又は行動に不当な影響を与える可能性があること(倫理規則注解6‐3一)です。
監査報酬の長期未払いによって監査人が監査対象会社に対する債権(貸付金)という金銭的利害関係を有することによって、監査人が当該債権回収のために監査意見を不当に歪める可能性を生じさせる原因になるということです。
事案の場合、例えば、監査人が継続企業の前提に関する重大な不確実性に目をつぶり、適正意見を表明することで会社を延命させて未払報酬の回収を目論むように監査人が自己の利益を追求することです。
長期にわたって未払いである場合
独立性に対する阻害要因は、監査報酬が「長期にわたって未払いである場合、特に次年度の監査報告書が提出される段階になっても未払いの割合が大きい場合」に生じるとされています。
監査報酬が「長期にわたって未払いである場合」とは、当年度の監査報酬は、「通常、次年度の監査報告書の提出までに支払いが完了していなければならない」とされています。
事案の場合には、未払いとなっている平成24 年3 月期の監査報酬の一部が平成25 年3 月期の監査報告書の提出までに完了していないので、この規定に該当します。
しかし、「通常」とされていることから、監査報酬の支払いが長期にわたって完了していないことだけをもって、重要な阻害要因が生じているとは判断できません。
監査報酬の未払いの割合が大きい場合
長期の監査報酬の未払いが重要な阻害要因となるのは、「次年度の監査報告書が提出される段階になっても未払いの割合が大きい場合」です。
事案の場合、未払いとなっている平成24 年3 月期の監査報酬(17,640千円-平成24 年3 月期有価証券報告書)の一部が重要な割合となっているのかどうかは不明です。また、どれほどの割合になれば重要な阻害要因となるかは監査人の職業専門家としての判断です。
そして、事案の場合、平成24 年3 月期の監査報酬の一部のみでなく、平成25 年3 月期の監査報酬も未払いとなっているとのことですから、小規模監査法人である監査人にとって未払いとなっている監査報酬の総額はそれなりの重要な金額になっているものと推測されます。
それでも、監査業務の特定依頼人に対する報酬依存度の制約から、また、契約解除を申し入れたことから想像すると、監査法人の存続を懸念しなければならないほどの重要性はないだろうと推測します。つまり、未払いとなっている報酬が回収できなくとも、何とかなるのだろうと推測します。
概念的枠組みアプローチの検討のタイミング
概念的枠組みアプローチを適用すべきかどうかの検討のタイミングは、「監査報告書の提出後も支払われていない場合、阻害要因の有無および重要性を評価し、必要に応じてセーフガードを適用して、阻害要因を除去するか、または重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減しなければならない」とされています。
事案の場合、平成24 年3 月期の監査報告書を提出した後に約定したとおりに報酬が支払われなかった(未払いとなった)ときに、そのことを阻害要因と識別し、その重要性を評価することが必要であったはずです。さらに、平成25 年3 月期の監査報酬も未払いとなっている状況からも、平成25 年3 月期を経過した時点に至ってはじめて阻害要因の評価・検討をすべきではなかったと思われます。
あるいは、平成25 年3 月期中ではセーフガードによって、阻害要因が除去されていたか、または許容水準まで軽減されていたが、期末に至って許容水準を超えてしまったのでしょうか。そのようには思えません。
阻害要因のセーフガード
「セーフガードには、例えば、監査業務チームの構成員でなかった別の会員から助言を受けまたは実施した業務の検証を受けること等が上げられる」とされているように、事前審査や事後審査・検査をきちんと受けることによって、監査人(業務執行社員)が自己利益擁護に走らずに真っ当に監査を実施すれば、阻害要因は除去または許容水準にまで容易に軽減できるはずです。
したがって事案では、監査人が監査報酬の未払いに拘泥せずに(つまり、報酬の受領を断念して)、監査人のなすべきことを全うしさえすれば良いはずです。
このようにみてくると、事案の監査人は、監査報酬の未払いを理由として、監査意見の表明を回避したとしか思われません。
結論
事案を検討した結論として、本ブログの2012年11月13日「監査報酬未払いを理由に監査人は辞任できるか?」において述べたことを再度述べておきます。
監査人は霞を食べている仙人ではありませんから大変なことは想像できますが、このような場合は公認会計士が士業のため「武士は食わねど高楊枝」と大見得をきりたいところです。
一端監査契約を締結したならば、監査業務を最後まで遂行し監査意見を表明しなければならないと考えます。監査報酬の未払いが続いていることが、監査人の業務遂行の妨げとなるものではないことから、監査契約の解除の理由にはならないと考えます。
監査人は、例外中の例外を除き、事業年度中における監査契約を解除できないと解すべきです。
事案のような状況の場合であっても監査人は監査を最後まで実施して、最終的な状況に応じて意見を限定するかあるいは不表明とすべきです。監査契約を解除して辞任することで監査人は自己の職務・責任から逃げてはならないと考えます。
"監査報酬未払いを理由とした監査人辞任への批判" へのコメントを書く