PCAOB「その他の情報に対する監査報告書における対応」について(その3 最終回)

前回に引き続き、アメリカの公開会社会計監視審議会(Public Company Accounting Oversight Board; PCAOB)が2013年8月13日に公表した、「「監査済み財務諸表および関連する監査報告書を含んでいる文書におけるその他の情報に関する監査人の責任」(The Auditor’s Responsibilities Regarding Other Information in Certain Documents Containing Audited Financial Statements and the Related Auditor’s Report) (以下「公開草案」という。)についてリリースメモ(RM)に基づいて紹介する。今回が最終回である。

重要な不整合等がある場合の対応
監査人は、その他の情報に重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者が含まれていると決定した場合、経営者に重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を修正する(revise)ように要請すべきである(6項)。

経営者がその他の情報を適切に修正しない場合で、a. その他の情報が監査報告書の発行以前に監査人に利用可能な場合には、監査人は、8項および9項に規定されている手続のうち実施可能な手続を実施すべきであり、b. その他の情報が監査報告書の発行以前に監査人に利用可能でない場合には、監査人は、10項および11項に規定されている手続のうち実施可能な手続を実施すべきである(7項)。

経営者がその他の情報を適切に修正しない場合(で、その他の情報を監査報告書の発行以前に利用可能な場合)、監査人は、タイムリーな方法でおよび監査報告書の発行以前に、監査委員会に重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を伝達すべきである(8項)。

監査人が重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を伝達した後でもその他の情報が適切に修正されない場合には、監査人は、a. 証券取引法10A条によるAU316「財務諸表監査における不正の検討」およびAU 317「クライアントの違法行為」に基づく監査人の責任を決定しなければならない、また、b. (1)監査人がその他の情報にまだ適切に修正されていない重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を識別していることを記載し、それらの内容について記述する監査報告書を発行するかどうか、または(2)監査契約の解除を行うかどうかを決定すべきである(9項)。

経営者がその他の情報を適切に修正しない場合(で、その他の情報を監査報告書の発行以前に利用可能でない場合)、監査人は、タイムリーな方法で監査委員会に重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を伝達すべきである(10項)。

監査人が重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を伝達した後でもその他の情報が適切に修正されない場合には、監査人は、a. 証券取引法10A条に基づく監査人の責任を決定しなければならない、また、b.AU561「監査報告書日に存在する事実の事後的な発見」に規定されている手続を適用すべきである(11項)。

本監査基準書に準拠して実施した手続の結果として、監査人が監査済み財務諸表に虚偽表示の可能性(a potential misstatement)があると決定した場合、監査人は、a. 財務諸表に対する監査報告書がまだ発行されていない場合、PCAOB監査基準14号「監査結果の評価」およびAU508「無限定適正意見からの離脱およびその他の報告状況(新提案中の表題)」(Departures from Unqualified Opinions and Other Reporting Circumstances)の要求事項に言及すべきであり、またはb. 財務諸表に対する監査報告書が発行されている場合、AU561の要求事項に言及すべきである(12項)。

監査報告書における記載
監査人は、監査報告書を発行するとき、「その他の情報に関する監査人の責任」とタイトルした監査報告書の個別セクションに、以下の事項を含めなければならない(13項)。
a. PCAOB監査基準に準拠して財務諸表〔および財務報告に係る内部統制〕を監査していることに加え、その他の情報に財務諸表との重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を含まられているかどうかを監査人が評価したという記載
b. SEC証券取引法による提出書類のタイプと財務諸表の年度末日を参照することによって、その他の情報を含んでいる年次報告書および監査済み財務諸表と監査報告書の識別
c. 監査人のその他の情報の評価が入手した適合する監査証拠および監査中に到達した結論に基づいているという記載
d. 監査人はその他の情報を監査していないこと、その他の情報に対して意見を表明していないという記載
e. 評価に基づいた以下の記載
 (1)監査人がその他の情報に重要な不整合または事実に係る重要な虚偽表示を識別していないという記載
 (2)適切に修正されていない重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を監査人が識別しているという記載、および重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者に関する記述

監査報告書の「その他の情報に関する監査人の責任」セクションの例示(14項)
a. 13項a.からd. の文例
その他の情報に関する監査人の責任
PCAOB監査基準に準拠して財務諸表〔および財務報告に係る内部統制〕を監査したほか、当会計事務所は、〔年度末日の〕財務諸表および当該財務諸表に対する当事務所の監査報告書を含んでいる(contain)、SECに提出された〔SEC証券取引法による提出書類のタイプ〕の年次報告書を構成している(included in)その他の情報が重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を含んでいる(contain)かどうかを評価した。当会計事務所の評価は、入手した適合する監査証拠および監査中に到達した結論に基づいている。当会計事務所は、当該その他の情報を監査していないし、その他の情報に対して意見を表明しない。

b. 13項e(1) 監査人がその他の情報に重要な不整合または事実に係る重要な虚偽表示を識別していないときの例示
当会計事務所の評価に基づいて、当会計事務所はその他の情報に重要な不整合または事実に係る重要な虚偽表示を識別していない。

c. 13項e(2) 監査人がその他の情報に重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者を識別しているときの文例
当会計事務所の評価に基づいて、当会計事務所はその他の情報に適切に修正されていない〔重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者〕を識別している。〔重要な不整合、事実に係る重要な虚偽表示またはその両者についての記述〕当会計事務所は、その他の情報に〔重要な不整合または事実に係る重要な虚偽表示(この記載は上記において識別されていない状況を示す。)〕を識別していない。

14項cの文例の最後のセンテンスは、監査人が重要な不整合または事実に係る重要な虚偽表示の両者ではなく、いずれかだけを識別しているときに適切である。監査人が、重要な不整合と事実に係る重要な虚偽表示の両者を識別しているときには、監査報告書は重要な不整合と事実に係る重要な虚偽表示の両者を記載すべきである(14項脚注10)。

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